書籍 「成井豊のワークショップ」より抜粋

感情解放のためのレッスン

*演技しない演技

演技とは、稽古で決めたことを、舞台でもう一度くり返すことではない。もちろん、稽古では、演技の一つ一つを、細かい部分まできっちり決めておく。が、実際に舞台に立ったら、観客の前に立ったら、自分の心を真っ白にする。「いい演技をしよう」とか、「この科白はこの言い方で」とか余計なことは考えないで、極力、他の役者の顔を見て、他の役者の科白を聞く。そして、その時、感じたことを、どんどん表現していく。稽古で決めたことに、どんどん上乗せしていく。この「自分の心を真っ白にする」というのが、とても難しいのだ。舞台という場所は、役者にいろんなことを考えさせるから。演技しようとする行為は、それが他人に見せる行為であるかが故に、そして自分自薦の肉体をつかってやる行為であるが故に、役者の心に様々な雑念を浮かばせるのだ。不安・恥辱心・過剰なプライド・功名心・優越感・劣等感などなど、数え上げたらキリがない。
これらを全部一つにひっくるめれば、「演技しようとする心」だと思う。演技しようと思ってやった演技は、ウソだ。どんなにうまくても、それは単にフリに過ぎない。自分の心を真っ白にして、他の役者の顔、他の役者の科白をしっかり受け取る。その結果、出てくる感情、出てくる表情、出てくる科白回しこそが、ホンモノなのだ。
この「自分の心を真っ白にする」ということが、感情の解放なのだ。演技しようと思っている自分を壊すこと。不安・恥辱心・過剰なプライド・功名心・優越感・劣等感などでがんじがらめに縛られた心を自由に解き放つこと。他の役者に対して、観客に対して、そして自分自身に対して心を開くこと。そして、フリでなく、本当に心を動かすこと。それこそが感情解放なのだ。

*感情解放のために
・馬鹿になれ、恥を捨てること
・自分自身の客観的に分析
・持久力と柔軟性と筋力
・身体感覚 自分が今どんな姿勢をしているのか、どう見えたのかを正確に把握する